Wide of the mark….....05
「オイオイ、楽しい思いして帰ってきたのに兄弟喧嘩かぁ?嫌んなるな」
ドアにもたれて話に入ってきたのは、リーだった。
「・・リー・・!」
「お前らの声、廊下まで丸聞こえだぜ」
状況をそれとなく察したリーは、溜息をつくとジョージの肩を掴んでとりあえずフレッドから離した。
「何があったよ?」
「あぁ、いや・・・」
フレッドは、ジョージをチラっと見て口ごもる。まだ冷静を取り戻せないジョージは、二人と目を合わさない。
すると突然ジョージはベッドに放ってあったパーカーを着て二人に告げた。
「わりぃ・・。頭冷やしてくる」
「あ、ジョージ!」
部屋を出て行こうとするジョージを、フレッドは呼び止めた。
「ごめんな、フレッド」
“お前は何にも悪くないよ”そう付け足して、ジョージは部屋を出た。
後に残されたフレッドとリーは、暫くその余韻のある部屋に立ちすくんだ。フレッドの脳裏には、先程のジョージが映し出される。
「俺がどれだけ悩んだと思ってんだよ!どれだけ辛かったか・・!」
ジョージがあれほど乱れるのは初めてだった。
その真意は分からないけど、関係なのは間違いない。
リーは、フレッドにとりあえず近くのイスに座るよう促して、詳しい話を聞く事にした。
「ジョージに何があったんだ?フレッド」
「・・俺も良くわかんねんだ。初めてだよ。双子だってのに・・」
「・・・・」
「きっとあいつ、今まで何かを溜め込んできたんだ。何で気付いてやれなかったんだろ・・」
「そんな時もあるさ。・・俺はお前ら双子が羨ましいけどな〜」
「そうか?」
「あぁ。・・・あ、酒飲むか?さっきドビーに無理言って貰ってきたんだ」
「飲む飲む!サンキュー」
「ジョージにはさ、好きにさせてあげようぜ。・・ま、なるようになるって!」
「・・・・だといいけどな」
こんな時は飲むのが一番!とリーはいつもの持ち前の明るさでフレッドを元気付けた。
学校で夜の杯を交わすのは久しぶりだった。去年の夏前に一回だけ。
「あの時もさ、楽しかったよな」
「あぁ。ジョージが潰れて凄かったけどな」
「今日は何に乾杯するよ?」
「じゃ、ジョージ君の恋煩いに乾杯って事で!」
「ジョージが聞いたらまたキレるな〜」
そう言いながら、二人は乾杯をした。ちゃんと、ジョージの分も残して――――――――――
一方、ジョージは談話室に向かっていた。少し腫れた目を隠すために、フードをかぶって。
腕時計を見て、現在の時刻を確認する。
「もう、1時になんのか・・」
こんな時間に誰かに会う事はまず無いけど、一応顔を隠すのにはもってこいだろう。
廊下は少し冷えるため、ズボンのポケットに両手をつっこんで歩く。夜だからなのか、やけに廊下が長く感じた。
談話室に近づくと話し声が聞こえた。一瞬、ジョージは入るのをためらう。
良く見ると、そこに居る人物が遠目でもすぐに分かって自分の目を疑う。
「・・・・?」