「リーは?あいつどこ行ったんだよ?」
「あ〜、何か最近好きな子が出来たんだとよ。その子の所」
「まさか、俺らの学年のマドンナ?グリフィンドールの・・」
「そう。あいつ前から気になってたじゃん。今日告るって意気込んでたぜ」
「おいおい、高望みしすぎなんじゃないか?まぁ・・俺ならイケるけどさ」
「それなら俺もイケるな」
「無理無理」
「同じ顔してるくせに無理とか言うなよ」
「それもそうだ」





いつものテンポの良い会話もむなしく、二人は同じ顔をして同時に溜息をつく。
フレッドは腹いせに舌打ちをしながらリーのベッドへ羊皮紙を丸めて投げた。



「リーのやつ〜。手伝いもしねぇで女かよー」




一方、ジョージは当人の居ないベッドを疲れた目で睨む。




「こんな時間まで何やってんだかね〜・・・・もう12時回ってんだぜ?」




ジョージの言葉に、フレッドはまた時計に目をやった。
疲れてるのか、それともただボーっとしてるだけなのか、目を細くしてしばらく時計を眺めている。




「告白だけにしちゃ遅すぎだし・・」
「こんだけ遅いっつう事はうまくいったんだよなぁ?」


「・・・・・・・」
「・・・・・・・」


「それにあの空き部屋には誰も来ないはずだ。俺らの“とっておき”の場所だから」




二人は顔を見合わせ、確かめ合うように眉を動かす。




「・・・まさか、なぁ?」



嬉しそうな表情で問いかけるジョージに、フレッドもまた、嬉しそうな顔をした。



「そのまさかかもな。真っ最中だったりして」
「や〜らし〜!ったく、リーもよくやるよ!」
「だよな〜!つーか羨ましい・・。相手もやり手で有名だし。もう確実だな」
「ほんっと。あ〜もうどんだけヤってないんだろ・・俺・・」
「な〜・・・・・・・・って、・・は?」
「・・ぁ・・」





二人は黙り込み静止した。ジョージはというと、視線を定めず意味もなくその辺の家具を見渡している。
“どんだけヤってないんだろう”という言葉は、1度でも経験した奴が言うセリフなわけで・・
つまりはジョージが“ヤッた”事があると自分で吐いたようなものだ。フレッドはそんな話聞いていなかった。



フレッドは、目が泳いでいるジョージを執拗に凝視する。
ジョージの顔に穴が開くんじゃないかという程見たあと、確信したかのような笑いを見せ、暫くの沈黙を破った。




「・・・ジョージ、お前経験あったっけ?」





フレッドは勢い良く上半身を起こしてジョージを見下ろす。
その行為を横目に、ジョージは咄嗟に目を逸らした。ヤバい・・逸らせばもっと怪しまれる・・・
そう思い恐る恐る視線を戻すと、案の定勘の良いフレッドは顔中に満面の笑みを浮かべていた。





「観念しろ、弟よ。俺の地獄耳をなめんな」
「弟よって、俺はロンか」
「さっきから動揺してるぜ。誰とだ?俺はそんな話聞いてないぞ!」
「あぁ・・・まぁ・・・言ってないし」




ジョージは、本当は言えなかっただけだった。これを言ってしまったら、何もかもが台無しになってしまうから。
それに、気持ちの無いSEXなんて報告したってしょうがない。ジョージには愛があったが、相手の気持ちは他に向いていた。
今目の前にいる、相棒フレッドに。



「言えよな〜。俺達は何でも言い合える仲なんじゃないのか?」
「何か・・・あ〜、ほら、恥ずかしいじゃん?言うタイミングも無かったし!」
「・・・・・ふ〜ん・・。お前は変なとこでシャイだな」





ジョージは床に顔を向け、恥ずかしそうなフリをした。靴紐をやたらといじってみたり、咳払いをしてみたり。
本当は、恥ずかしい訳じゃない。あまり話したくない。いっそ、自分の気持ちも誤魔化してしまいたい。




「で?誰なんだよ、相手は?」




フレッドは、ジョージから切り出す様子も無かったので改めて問いかけた。
ジョージは床から目を離しフレッドを見る。言葉が、喉の所で詰まってる。



きっとフレッドも相手が誰かなんて殆ど気付いているだろう。それも、ジョージがそんな行為をしたいと思いそうな女は一人しかいないのだから。
いつも何かと一緒で、フレッドが相棒のジョージを取られて嫉妬してしまう程に仲がいい。
口に出しては言わないが、フレッドから見て、ジョージは明らかにその子に惚れていた。フレッドの目は、“もう分かってる。だから吐け”そんな目をしていた。