素直になれない


















夏休みが近づく。暑いのが苦手な私には酷だけれど、実は楽しみだったりする。
ホグワーツに入学してから早3年。仲良くなった友達と長期休暇の時に、互いの家に泊まりに行くのが恒例になっているから。
残念なのはいつもハリーが来れない事。マグルの叔父さん達がいい顔をしないのだそうだ。



「もう時期夏休みね。ねえ、。今年は一番に私の家に来てよ!」


朝食のスクランブルエッグをフォークで突っ突いているとハーマイオニーがそう言って笑いかけてきた。
少し考えていると私の正面に誰かが座る。視線を上げ相手を確認して・・私は息を飲んだ。
私の前に座っているのはニコニコ笑うフレッドとジョージで。「おはよう、」と今日も見事なハモリで挨拶をしてきた。





「なんの話しをしてたんだい?」
「僕らも混ぜてよ」
「夏休みの話しよ。に今回は一番に私の家に泊まりに来て欲しいって言ったの」




無邪気な顔で笑うハーマイオニーに頷いて「まだ決めてないけどね」とつけたす。
それが不満だったらしく、彼女は「もう!」と腰に手を当てて怒った素振りをした。

フレッドとジョージは何故か目をキラキラさせ顔を見合わせると頷き合う。



双子だけあって意思の疎通が出来ているらしく、彼らはよくそうする。毎度見る光景なのだけど、一緒に話しをしてる最中にそういった行動を見ると疎外感を感じるんだ。
私は彼らの間に入れないのだ、と。彼らの世界にいないのだ、と。


、今年は僕らの家においでよ」
「そうだよ。ママもパパも会いたがってる」
「え??」




勝手に落ち込んでいるとフレッドとジョージがそう言ってきた。突然過ぎて理解出来ず、声が裏返ってしまった。
瞬きを繰返しながら彼らの言葉を何度も頭を巡らせていると「駄目??」と首を傾げる。

駄目・・じゃないけれど・・・。その言葉が出ないほど私は完全にパニックに陥っていた。



確かにロンとも仲がいい。ジニーだって懐いてくれている。そんな二人からだったら私は頷いていただろう。
けれど・・・彼らは二人とは違う。


「い・・・」
「「い? なに??」」
「い・・や・・・・・・・」


場が凍りついたのが分かった。

完全にショートした頭でなにも考えずに出た言葉。たった二言だけど拒否の言葉にスッと背筋が冷たくなる。
本当はこんな事言うつもりなかったのに・・・。今の言葉を訂正しようと開いた口から言葉はでず、変わりにフレッドとジョージが口を開いた。




「「そっか、じゃあしょうがないね」」



あっさりとそう言ったフレッドとジョージ。

彼らは「バイバイ」と手を振ってさっさと広間を出て行ってしまった。
状況が全く把握出来てない私の腕をハーマイオニーが引っ張る。ゆっくりとした動作で彼女の方を向けば少し怒った顔。



。いくらなんでも酷いんじゃない?」
「私・・・ちが・・・・・」
「分かってる。あんな事言いたかったんじゃないのよね」



仕方ないわねえ、と腕を組んだハーマイオニーは一つ息を吐いた。


「どうして私やハリー達とは普通に話せるのにあの二人だと素直になれないの?」
「分かんない・・・。緊張して頭が真っ白になっちゃって・・・」


眉を寄せ今にも泣きそうな私の頭を撫でながら「本当素直じゃない」と呟く。
二人が苦手な訳じゃない。むしろ大好き。

サラサラな赤髪もクリクリの目も息の合ったあの言動も。悪戯している時の生き生きした表情が一番好きなのを自覚はしている。
だからこそなのだろう。どうも彼らを前にすると緊張して頭が真っ白になってしまう。誰かを交えて四人で話しをするのは大丈夫なんだけれど、私に話しが振られると思考が停止してしまう。




「時間かかってもいいから、ちゃんと自分の思った事伝えなさい」
「でも・・どうやって・・・」
「大丈夫。思った事を言えばいいのよ」


そう言ってニッコリ笑うハーマイオニーに背中を押され、食べかけの朝食をそのままで私は広間から駆け出た。
彼らは何処に行ったのだろう。当てもなく走る私を好奇心の目が向けられるけれど構ってはいられない。



「あれ?、そんなに急いでどうしたんだい??」


長い廊下をキョロキョロしながら走っているとハリーが手を振って私を呼んだ。
息を切らせながらハリーの元に行くと「大丈夫?」と心配そうな声で問われる。息が切れて思う様に言葉が出なくて頷けばハリーの隣に立つロンが小首を傾げる。


「誰か探してるの?」
「そ・・そう・・・」
「誰?まさかスネイプ」
「そんな訳ないでしょっっ!!」


思わずロンの左頬にグーパンチ。しまった!!と口に手を当てた瞬間、ハリーがお腹を抱えて笑い出した。




「あははは!!、見事な右ストレート!」
「ちょっとハリー・・少しは僕の心配をしてくれよ」
「だってロンは無事だろ?・・・っで、いったい誰を探しているんだい?」


ハリーが首を傾げた。
私は少し戸惑い、口をもごもごさせながら「フレッドとジョージ・・・」と言えばニヤニヤ笑い出した。

見透かした様な眼差しを向けられ居心地が悪い。
俯く私にハリーは「あっちでさっき見かけたよ」と笑う。弾かれた様に顔を上げれば「じゃあね」と言ってハリーはロンを引っ張っていく。





「ハリー!! ありがとう!!」


そう声をかけて、ハリーが指した方角へと急いで向かう。

長い廊下の角を曲がったところで、私の足は止まった。探していた彼らがいたから・・と、彼らの隣に一人の女の子がいたから。
距離が離れていてよく会話が聞こえないけれど楽しそうに話している。

私もあの女の子の様に楽しく話しが出来れば・・・。そうすればフレッドとジョージにこの気持ちを伝えられるのに・・・。
しゅんと沈んでいると三人の会話が耳に飛び込んできた。途切れ途切れで全部は聞き取れないけれど聞こえた単語に顔が青ざめた。







夏休み泊まりに



おいでよ



ママもパパも楽しみに





そっか・・・。私が誘いを断ったから今度はあの子を誘うんだ・・・?
沸々と湧きあがってきたこの気持ちは嫉妬なんだろう。そんな事を頭の片隅で思いながら私は大股で近づいた。
私に気付いたフレッドが驚きの表情をし、隣に立つジョージの服を引っ張ると彼も私に気付き目を見開く。





、どうしたん――」
「フレッドとジョージの馬鹿!!!!」

私は振り下ろす様に二人にパンチをした。女の子が「きゃっ!!」と声を上げ後ずさる。


「最低!! 夏休み私を誘って断ったからって別の子を誘う事ないじゃない!!」
??」
「もうやだ!!二人なんて大嫌い!!」



もう一度手を上げたけれど振り下ろせない。手はジョージの手で捕まれてしまったから。
手を引いてもジョージから逃れる事は出来なくて私は俯いた。


「違うよ、。誤解だ」
「なにが誤解よ!!」
「本当だよ。僕らはただ相談に乗ってもらってただけなんだって」



顔を顰めながら顔を上げると困った顔で笑うフレッドとジョージ。そして女の子。
きょとんとしながら女の子を見れば「そうなのよ」と微笑んだ。

もしかしなくても勘違い・・?しかもすっごい恥ずかしい勘違いをしてしまった・・・?
顔から火が出そう!!


「なに? はヤキモチを妬いたのかい??」
「さっきは「いや」って言ったのに??」




意地悪な笑みを浮かべるフレッドとジョージ。私はその場に座り込んで「違う」と訴えた。
けれど彼らの悪戯は止まらない。




「そっか。ならいいんだけど」
「ねえ、リサ。夏休みに僕らの家に――」
「あーもう!!そうよ!ヤキモチよ!!それのなにが悪いのっっ!二人が他の誰かを誘うなんて嫌!!」


完全に遊ばれている事は分かるけれど、なによりも冗談でも嫌。

硬い石の床をバンバン叩いて私は彼らを睨み見た。とても楽しそうな顔にげんなりした。
女の子――リサさんはクスクス笑い、私の肩をポンと叩くと「頑張ってね」と言って去っていく。今度謝らなきゃ・・・。




「あはは!は本当にヤキモチ妬きだね!!」
「「他の誰かを誘うなんて嫌!」なんて言っちゃってさあ」
「「 本当ワガママ姫だ!! 」」


ケラケラ笑いながら私の前にしゃがみ込んだフレッドとジョージ。
嬉しそうな顔で私を見てくる。


「あれは・・その・・・咄嗟に出た言葉で・・・」
「咄嗟に出た本心なんだよね」



よしよしと私の頭を撫でるジョージが「ね?」と微笑んだ。
ああ、もう。こんな風にされたら困っちゃうよ・・・。"素直じゃない"とか"不器用で"とか言って逃げれないじゃない。
いつもなら真っ白になる頭も今ははっきりとしていて、それに戸惑いながら二人の服をギュッと握り締めた。




「二人が・・離れちゃうのは、いや・・・」


素直に言葉を言ったらポロポロと涙が溢れた。
涙で歪んでよく見えないけれど、フレッドとジョージが嬉しそうに微笑んで私の手を引く。

そのまま私は彼らに抱き締められ頭を撫でられた。口にする事でこんなにも幸せと感じれるならもっと早く言えばよかった。
緊張しながらもちゃんと言葉にすればよかったなあ・・・。




「それで、
「どうするんだい??」

幸せに浸っているとそんな声が振ってきた。顔を上げ首を傾げるとにんまり顔で「夏休み」と囁く。
ああ、そういえばそうだった。本当の事をまだ伝えてなかった。


「二人の家に、行きたい」
「「 大歓迎さ!! 」」


さっきよりも強い力で抱き締められ揉みくちゃにされながら幸せを感じた。
けれど・・・。




「ベッドは僕らと一緒でいいよね?」
「・・・え?」
「早速パパに手紙を書かなくちゃ!ベッドを大きくしてって」



え? 本当になに言ってるの??
フレッドとジョージの言葉に瞬きを繰返す。彼らの言ってる事が理解出来ない。
そんな私を他所に、彼らはどんどん話しを進めて行く。


「ね・ねえ、待って!待ってってば!!」


ペシペシ叩いても二人きりの世界に行ったきり。
また・・仲間はずれ・・・その前に人の話しを・・・。





「人の話しを聞いてってばあああ!!」


バチン! と大きな音を立てて二人の背中を叩けば驚いた顔でやっと私を見てくれた。

「痛いじゃないか!」
「それでも愛しいと感じるのはやっぱり"愛"だよね!」
「・・・・・・ねえ、間違えないで。それは"マゾ"って言うのよ」
「なにを言うんだい! 痛みが嬉しい訳じゃないよ!!」
「そうさ!からの痛みだからこそ愛を感じるんだよ」


「「 これがマゾというのかい!! 」」

「他に言葉があるなら教えて欲しいわ」







背中を押さえながらも強く言う彼らに私は頭を抱えた。

なんだか自己嫌悪に陥ったり、素直になれない事を悩んだりするのが馬鹿馬鹿しく思える。
はあ・・と大きな溜息を吐きながら私は立ち上がりフレッドとジョージを見下ろした。


「やっぱり、夏休みの件なしにして」
「「 えーーーー!!どうしてだい!?」」
「色々と考えたいの」




ふんと鼻を鳴らして踵を返す私を彼らが追いかけてきてご機嫌とりを始めたけれど無視。


しょげて「話しを聞いてよ!!」と言い出す彼らには普段私がどれだけ蚊帳の外にされて悲しかったのか思い知ればいいんだ。
鼻歌を歌いながら歩く私と後ろをついてくるウィーズリー兄弟に好奇心の目が向けられているけれど気にしない。

だって私は今とっても幸せなのだから。














素直になれない



――後日、変な噂が流れたのはまた別のお話し













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亜依様への相互お礼の夢です。
双子でギャグチックな甘・ツンデレヒロインとの事でしたがなんとも不思議な話しになってしまいました。

亜依様、よろしければお受取りください。
どうぞこれからもよろしくお願い致します。






これだよ、これが書きたかった!! どうして、亜依はこんな素晴らしい小説を書けないんでしょう??
礫様はずるいです。脳みそ半分・・・交換しない?(ヲイ

ギャグチック感がもういいです。そしてばっちりハリーがちょい悪(違)な感じだったので、なお素晴らしいヽ(>▽<)ノ
こんな素敵な小説を貰えて本当に嬉しいです(`・ω・´)

これからも末永く、宜しくお願いしますね!!
亜依は愛し続けます!!(いい迷惑