想うのは貴方だけ

















いつだって、想っているのは私ばかり。そう思ってたの。







「ねぇ、ロン?」
「何、



「ハリーのこと、好きなの?」


「はぁ????」



談話室のソファに隣同士で座ったハリーとロン。反対側にはが座っていて各自チェスやら読書を楽しんでいた。
けれど突然、ロンの反対側に座っていたが声を掛けたのだ。
いたって真面目な顔をして問う少女、ロンはその質問の内容に思わずズッコケそうになるほど眉を顰める。


少女の大きな漆黒の瞳にはロンの姿がしっかりと映されており、安易に好きだなどと口走ればきっとその大きな瞳からは今にも涙が溢れ出すだろう。


、僕はゲイじゃない!」
「ロン、『僕は』じゃなくて『僕等は』にしてよ。僕だってゲイじゃないんだから。」
「ハリーがゲイかノンケかなんてどうでもいいの。とりあえずあんまりロンにくっつかないで」


聞き捨てならないぞ!とばかりにを見るハリーだがの瞳にはハリーは1mmも映っちゃいない。
彼女の瞳に映っているのはロンだけだ。もしかしたらハリーの顔さえ覚えていない。いや、顔どころか眼鏡という認識程度だったら・・・そう考えたらぞっとする。


とロンは付き合っている。そんなの悩みはロンが一度も好きだと言ってくれないことだ。
だから、他に好きな子がいるんじゃないかとか心配になるし、ロンが自分以外の人間の隣で笑っていたり、ベタベタとしていればムッとした顔をして暫く口を利かなくなる。そうかと思えばロンからその人間を引き剥がすようにしてみたり。
それが男だろうが女だろうが、先生だろうが関係なしに。それくらい、の愛情は深い。




早く言ってあげればいいのに、と考えたところでハリーは一つ溜息を吐く。
何かきっかけがない限りロンが言うわけないじゃないか、と。



そこまで考えてハリーは気づく。
きっかけがないなら作ればいいだけじゃないか。

















「そういえば。ロンが言いたいことあるみたいだよ?」


突然のハリーの言葉にロンは立ち上がってハリー!と叫んだのだから驚いた。


何を言いたいのかなんて、見当もつかない。どうしよう、別れたいって言われたら。
やっぱり、それって・・・


「ロン・・・・」
「・・・・?どうしたんだよ」


が先程より一層不安げに瞳を揺らし、今にも泣き出しそうな声で名前を呼ぶものだからハリーに怒っていたロンは屈んでの顔を覗き込んだ。








「・・・言いたいことって?」
「っあー・・・・それは、その・・・・・」


潤んだ瞳でロンを見つめるの思考はパニック状態。何を考えているのか分かったもんじゃないが、ロンは気まずそうに目線を逸らす。


「やっぱり・・・・」
「「やっぱり??」」


俯いて呟いたにハリーとロンが何がやっぱりなんだ、とばかりに声を揃えてを見れば彼女は勢いよく立ち上がった。
彼女の瞳からは大粒の涙が溢れていて、頬を伝い、床に落ちていく。




「やっぱりロンはハリーのことが好きなのね!ロンの馬鹿!!もう知らない!」



泣きながら叫んで、は嵐のように談話室から出ていってしまった。
どうして彼女はそう自分に自信がないのか。否、ロンがいけないのか。はぁ、と再び溜息を吐いたハリーをロンは忌まわしげに見た。


「僕を睨むより追いかけて早く好きって言ってあげた方がいいと思うよ?」
「ハリー、今度寝てる時にパジャマの中にスキャバーズを入れてやるからな!」
























人間追いつめられると上へ逃げるって言うけど、それは本当みたいだ。
を探してどうしてか天台の塔へ登ったら階段の途中に彼女は蹲ってた。微かに聞こえてくる嗚咽に、罪悪感を感じる。


。」
「っ・・・ロ、ン・・・・?」
「僕さ、その・・・言いたいのはハリーが好きってことじゃなくて・・・・」


未だ涙を零しながら僕の名前を呼ぶがとても可愛くて、でも、はっきりとそれを伝えられない自分がもどかしい。


「そうじゃ、なくってっ・・・な、に?」
「その・・・・」


恥ずかしさでの顔がちゃんと見れないし、溢れ続ける涙を掬ってあげることもできない。
これじゃあハーマイオニーにへたれだと叫ばれても仕方ないか。


「嫉妬ばかりしてる私のこと、嫌いになっちゃった・・・?」
「そんなことない!僕・・・・僕、のこと好きだよ!!」


きょとんとして、それから本当に?と首を傾けるの正面で目線を合わせるように屈んで、涙を掬ってから僕はを抱きしめた。


「本当だよ。がいなきゃ、恋愛なんて出来ないよ。僕一人じゃ、駄目なんだ。君がいないと恋愛として成り立たない。だから、もっと妬きもち妬いて、僕だけ見てよ」
「うん。ロンも私だけ見てくれなきゃ、嫌よ?」


当然。そう答えてから少し身体を離して、しっかりとを見つめて愛してるよ、と言葉を紡いだ。
が少し恥ずかしそうに私も、と答えたのと同時に、薔薇色の唇を塞いでやった。