良く考えてみれば、一緒にご飯を食べに行くのは初めてだった。
いつも、人の目を気にしていたから、こんな堂々と出来なかった。
この日を覚えておこうっと。
Not cry, My Angel....06
「ダン・・遅くなってごめんなさい・・・・指輪が見つからなくて・・」
「指輪?」
「ダンがくれた星の・・」
あんな指輪を必死で探していたなんて。
たかが3000円の指輪をそこまで大切にしてくれるなんて。
余計に愛おしくなるじゃないか。
「何処に行こうか?」
「そうだな・・・ここら辺なら・・・」
「ダーーーーンッ!!」
行き成り名前を呼ばれたと思ったら、弾き飛ばされた。
胸元に思いっきり床に当たったせいで、息がしにくい・・・。
「もしかして、でしょ!わー奇遇だな!ダンと食べに行ったりするの? じゃぁ僕も付いて行って良いかな!?」
ルパートだ・・・。
そういえば、の大ファンって言ってたな・・・。
僕を弾き飛ばしてまでに話しかけって良い度胸してんじゃん?
「ゲホ・・、行こう・・ルパートに邪魔されないように」
「付いて行ったって良いだろー?」
「よくない!」
僕はをひっぱりだして、近くのファミレスのほうへ逃げる。
「え・・・此処?」
「一緒に食べるんだ、別に何処でも良いでしょ?」
「まぁ、そうだけど・・・」
はファミレスの前で、カツラ付き帽子をかぶる。
の腰元まである髪を束ねて、カツラを被れば、まったくの別人に変化させる。
口元には、少し大きめのホクロを書いたりして。
あまりの手つきの良さに呆れてしまったりもする。
僕は度の入ってないメガネをかけるだけ。 用心する気ないんだよな・・・。
「いらっしゃいませーーッ!」
2人のウエイトレスがデカイ声で言ってくる。
別に言ってもらわなくても良いんだけどね。 驚くのコッチだし。
「何名様ですか?」
「二名で・・」
「お煙草はお吸いになりますでしょうか?」
「いえ・・吸いま・・・・」
「ではコチラの席にドーゾー!」
強引か?
無駄にテンションが高くて、僕の苦手なタイプだ。
でも連れて行ってくれたのは、隣に誰も座っていないし、隣には擦りガラスでお互いが見えない。
外からは、この店のロゴと、オレンジ色のデザインで内側が見えなくなっている。
これなら丁度良いや。
「お決まりになったら、そちらのボタンでお呼び下さいませー!」
そういって去っていくウエイトレス。
此処にお客用アンケートがあったら、ウルサイと書いてやりたいな。
「アハハ!テンションが高い人だったね」
「僕の嫌いなタイプだ・・」
「あら、太りすぎの人が嫌いって言ってなかったっけ?」
は笑いながら、机に置かれたお水を飲む。
飲んだ後がコップに残って・・・
あーあ、これが次来たどっかのお客に使われると思ったらヤだなぁ。
「ダンはなに食べたい?」
「そうだなー・・サイコロステーキとか食べたいな」
「あ・・あったあった。サイコロステーキね。私はー・・・・コーンスープにハンバークかな」
「そんなに食べるの?」
「好物を食べる時に我慢はしないタチなの。食べてなきゃやってらんないって、こんな仕事」
は、すぐさまボタンを押してウエイトレスを呼び、
僕の分も入れて注文してくれた。
「少々、お待ち下さいませー」
「そういえば・・ダンって、私が合格するようにお願いしたって本当?」
「どうして知ってるの?」
「この業界じゃ、噂なんてすぐ耳に入ってくるの。」
「・・・・」
「嘘、オリバーが教えてくれたわ。もちろんCM中だったけど」
「オリバーが?」
「ジェームズは面白可笑しく教えてくれたわ。CM明けで見れなくなったから残念だけど」
僕の返事を待ってるせいか、沈黙が流れる。
「ありがとうね」
「・・・うん」
「ダンと共演出来るし、DVDになったら残しておけるし・・・事務所に頭下げてお願いしたのよ? マネージャーからも反対されたんだ『が体を壊してしまう!』って。でも『出演出来るんだったら体を壊しても良いです。今、私の頑張り所でしょ?』って言ったら、アッチが負けたみたいにOKを出してくれたの。へへ・・作戦勝ちv」
ピースサインをしながら、丁度持ってこられたコーンスープを凝視していた。
「うわー・・・熱そう」
「猫舌じゃなかったから大丈夫v」
親指をあげて、皿の横にあったスプーンを使っていっぱい飲む。
・・・・やっぱり熱いんじゃん。
ビックリしたような顔してるよ。
「ダンも飲んでみる?」
「良いよ、サイコロステーキ用にお腹を空けておかないと!」
「まぁ、いっぱい飲んで!」
酔ったオッサンみたいに、僕にコーンスープ入りのスプーンを差し出す。
拒むのもアレだから、僕はそれを飲み込んだ。
関節キッスだよな。
まだ、キスもした事・・・あるけど、ドキドキしちゃうんだよね。 本気でブチュとした事ないし。
やべ・・・・このスプーンも持って帰らないといけないかも。
窃盗に手を出しちゃうかもな・・・。