困った顔はしていたけど、本当は嬉しかった。
が、最有力候補って言われて。チャンスが、目の前で光り始めた。



あとは、僕が掴むだけ。










  Not cry, My Angel....04










「エマ・・ッ!・・はぁ・・ふぅ・・・インタビューは如何する気さ・・ッ?」
「そんなの待ってもらってたら、良いじゃない! アッチはデタラメが多い三流雑誌なんだから」
「いや、それは失礼だろ・・・」
「良いのよ! 私が飲酒したってデタラメ記事を書いた所なんだから!」
「また酷くかかれるぜ?」
「その時は潰して見せるわ」


よほど腹が立ったのか、僕らの手首を血が止まるじゃんないか? と、焦るほど力強く握る。



「監督もこの階って聞いたんだけど・・・」
「え・・場所知らないの?」
「知らないわよ。別々のインタビューだもの。最後に写真撮るだけで」


だったら、なんてあんなに急いで部屋に出たんだろうか・・・。



「おや、どうしたんだい?そんなに焦ってるんだい?」
「デビッド・・・」
「ほら、コッチに来て良かったでしょ?」


デビッドは不死鳥の騎士団の監督になった。
デビッド・イエーツってあんまり知られてないのに、ハリポタの映画に抜擢されるって・・・
やっぱり映画の世界ってまだまだ分からない・・・



「デビッド、少しお話があるんだけど」
「・・どうしたんだい?」
「チョウ・チャン役の事についてなんだけど」
「あぁ、その事だったら君達の意見も聞きたかったんだよ!ちょっと来て」


すぐそこの楽屋を開いて、僕らを招き入れる。



「「ゲ・・・」」
「汚・・い・・・」


そこは、あたかも自分の部屋みたいに紙という紙が散乱している。
良く見れば、履歴書の山。



「これは・・・」
「チョウ・チャン役に応募してきた女の子の履歴書。ざっと一億人」



イチオク?
イギリス人口の1割が応募してきてるって考えても可笑しくない。
そんなに応募してくるとは・・・



「これって全国からの応募ですか?」
「そう。一番多いのはアメリカ。次が中国で、その次がカナダ」
「どうやって選考するつもりですか?」
「写真の印象で2段階に決めてる。1が"可能性有り"、2が悪いけど"無理"。」


机の真ん中に置かれているダンボール8つ。
"2"と雑な赤い字で書かれているのが7つ。 オレンジ色のペンで書かれた"1"。
中にが入っていることを願うしかないな。



「うへー・・・すっげぇ量」
「1億人の顔を見るだけでも、嫌よね・・・。しかも、これだけでその子の一生が決まるようなモンだし・・・」
「1に選ばれた人って何人ぐらいいるんですか?」
「あと247人で終わるんだけど、今の所は0。」


ゼロ・・? が落選したりしたのかな。
焦りで、熱くないのに汗がダラダラと出てくる。

大ファンと言っていたロンでさえ、ショックな顔をしているほど。



僕達と会話しながらも、一枚一枚写真だけを見て、さっさと"2"のダンボールの中に入れる。



「アッ!この子なんて良いんじゃないかな。顔もケイティ以上に綺麗だし、髪も黒!」


笑顔で1に紙を入れるデビッド。
僕は、我慢できなくなってすぐさま"1"の箱の中を見る。







だ・・・」



ダンボールの中に入った履歴書みたいな紙には、しっかりとの写真。
宣材写真なんだけど、全身の写真はの綺麗さが、顔だけの写真では、の可愛らしさがわかる。

カメラマンの力って凄いね。


「やっぱりは最有力候補なのよ!」
「やった、と共演できる!」



僕等はティーン後半のくせに、子供みたいにハネながら喜んだ。


ってあの芸能人の?」
「そうです! あぁ、夢見たい!あのと共演できるなんて!」
「有名だよな。僕の姪と甥ものファンでね。これだったらハリポタファンの人も食いつくだろうし、ファンの人も食いついて映宣になるな!」

で決まりじゃダメでしょうか・・・私達、にして欲しくて監督の所に急いできたんです」
「途中でエマが迷ったけどね」
「五月蝿いわね・・・。ダンも私もルパートも大ファンなんです。と共演する良い機会って話してて・・・」


ファンのエマは必死にお願いをする。


「良いよ。の事務所にもOKの返事を出さないとな」


ニッコリ笑顔で言うデビッドが神に見えた。
やった! と共演できる!