Not cry, My Angel....30
僕とは、同じ場所から登場するのかと思いきや、
僕は北側、は東側と、まったく違う方に行かされた。
まぁ途中で会うんだけど。
熱烈なファンだったら柵を乗り越えてきちゃうかも・・・って考えてしまった。
まぁ警備の人の数はハンパないから、大丈夫なんだけどね。
『それでは登場してもらいましょう。まずは、主役のハリー役のダニエル・ラドクリフ君!!』
少量のスモーク。
四方八方から僕に向かって吹いている。
女性ファンの、ガラスコップを割りそうなほどうるさい歓声。
そんなに叫ばなくったって、ちゃんと見渡すし、手だって振るよ。
大きく手を振って、近くのファンのサインに応じる。
時にはカメラをかりて、僕自身がシャッターを押し、写ったりもする。
『続きましては、ケイティーに続きチョウ・チャン役に抜擢された・!!』
この位置からは見えないけど、女性だけじゃない男性の叫び声も聞こえる。
サインも少し雑になったかも。
は難しいサインなのに、とても素早く書いている。
何千枚も書いてるから慣れちゃっているんだろうか。
僕もも、普通のペースを装いながら進む。
記者も、ファンも心では見たがっている僕との2ショット。
が横から来た瞬間、僕は手を伸ばして、の手を掴んだ。
貝殻つなぎを見られるように。
写真に撮られるように。
もちろん、全ての人間が写真を撮っていた。
時に奇声を上げる人もいたけれど、そんなのお構いなし。
にキスするように顔を近づけたときは、昼並みに明るくなった。
「ちょっと、ダン!!」
「キスしてほしかった?」
「こんな大勢がいる所でしなくったって・・」
「見せつけだって」
少し照れながらも、は普段通りに僕にベッタリとくっ付いた。
熱い季節なのにも関わらず、暑苦しくない。
海外のメディアにもすぐに撮られるに違いない。
明日の芸能ニュースで放送されるかもしれない。
その一つ一つが楽しみなんだよね。
『Mr. and Mrs. Radcliffe』(ラドクリフ夫妻)
と書かれたボードがあちらこちらに見えて、照れくさく笑っている。
司会の人にも
『目立つボードが何個もあって、こちら側も恥かしくなってしまいますね』
と笑いを取った。
デイビットも腹を抱えながら笑ってて、
もとても恥かしそうに笑っていた。
僕達の存在を色んな人に知ってもらえたかな。
明日の日本の芸能ニュースチェックしなきゃ。