Not cry, My Angel....02
「僕・・・大ファンなのに!」
「二回も言わなくても良いから」
あんぐりと口をあけて、目をショボショボさせている。
「何処までいったんだよ!僕のと!」
「僕のだ!」
「もー!はダンでもルパートのでもないわ!私のよ!」
「「コラコラコラコラ・・」」
エマがソッチ系の女の子だとは思わなかった!
ブラピが好きだったんじゃないの? ブラピが悲しむよ?
「話をそらさないで! ダン、貴方はどうしてと付き合ってるの?」
「お願いだからサァ・・・""って言わないでくれる? もし誰かに聞かれたらどうするつもりサ」
「あぁ・・ごめんなさい。で、どうしてと付き合ってるの?」
1人半ぐらいしか座れそうに無いのに、2人が僕に密着するように近付いてくる。
暑苦しくてしょうがない。
少しは僕の気持ちも考えてくれないだろうか。
「わかった。ちゃんと話すから僕から離れてくれないかな?暑苦しくてしょうがない・・・」
・・・・・・・・・・・。
神業!
"話すから、離れろ"と言った瞬間、どんな動物よりも、どんな乗り物よりも素早く僕の近くの椅子に座った。
しかも、勢い良く席に付いたせいで、椅子ごと後ろに転がりそうになっていた。
その姿に、笑いが起こりそうだった。
「えーっと・・・何処から話そうかな・・・」
「焦らさないでくれよ!」
「そうよ、早く!」
「まとめさしてよ・・・」
・
と会ったのは、かんかん照りの真昼。
が出ているレギュラー番組でもある『Polester』と言う恋愛番組に、僕が直々に指名されたのがきっかけで出演した。
その番組には、4人の男性とをいれて2人の女性が出演している。やっぱりが一番輝いて見えたなぁ・・・。
僕がゲストだからって、の隣に座れた。
良い香りが鼻の奥を刺激されて、何度か意識が飛びそうだった。
『はい、ハリーポッター役で有名なダニエル・ラドクリフです!』
『なんと、ダニエルはの直々指名! モテる男はつらいねぇー!』
『モテるといえば、ダニエルは何人と付き合ったことあるんだい?』
さすが恋愛番組。 皆慣れているようで、すぐさま僕に質問が飛び交う。
恋愛番組っていうか、暴露大会所みたいで、カメラの横に雑誌の記者が6人ぐらい並んでいる。
なにを言うべきなのか悩みながらも、僕は何問かの質問に答えた。
『そういえば、のファーストキスって何時だっけ?』
『えっとねぇ・・・デビューする1年ちょい前にー・・あ、私バスケ部のマネージャーだったんだけど、背が高くてグリーンアイの先輩がいて、"ドリンクどうぞー!"って渡した瞬間、手を掴まれて、無理矢理ブチュッ!って・・・その後固まったけどねー・・アレがファーストキスっとは思いたくないなぁー・・・』
僕は唖然としてを見たのに、周りの皆は大爆笑しながら手を叩く。も照れながら大笑いして。
『ダンは何時なの?』
『僕はー・・・』
なんて答えるべきなんだろう・・・どうしよう・・・。
『幼稚園の時の女の子にキスされたのかな』
嘘なのに。シーン・・とならないように嘘を付いた。
『ありえねーー!』
『幼稚園で普通にキスしてる子ってそういえばいるよなー』
『私の妹だってしてたわ』
『おませな子供ーーーッ!!』
慣れてるお陰で、周りの男の子達が笑い始める。
それにつられて達や、嘘を付いた僕さえも笑ってしまう。
『あ、新しいコーナが始まったようですねー・・えっと題して "あなたが選ぶキスのシチュエーション"! 』
ションの所を"ショーーーーンッ!"と読んで、大いに盛り上がる周りの人。
僕は作り笑顔になりながらも拍手をする。
『じゃぁ、まずから!』
『えーーーッ!』
『ファンの皆が一番聞きたがってるんだぜ?』
客席からは女の子もいるが、大半が男の子で、"ウォーーッ!"と雄叫びを上げまくっている。
この人達がのファンとは・・思いたくないな、悪いけど。
『んー・・・・しょうがないな。あ、ダン手伝ってくれる?』
『・・・え?』
『1人でしても楽しくないでしょ? ダンはゲストだし・・ね?』
『う、うん・・・・』
僕は立ち上がって、前に出たの横に並ぶ。
ライト変更があっておかげで、5秒ぐらいかかりながら、ライトの色や証明の数が変わった。
『ダン、来てくれてありがとう・・・。ダンの事、ファンとしてじゃなくて好きだわ』
5秒。 その少なすぎる時間の中で、は僕に "告白" をしてきた。
耳を疑うしか、出来なかった僕は、ライト変更が終わっても、身動きできなかった。
『えっとね、私的には普通にこう手を繋いで歩きながら、私からキス!・・みたいなv ・・こんな感じ』
は僕の手を掴む。後ろと前から歓声なのか悲鳴なのか分からない声が響く。
は歩いたフリをしていたのに、突然動かなくなって、僕の目の前に顔を寄せる。
多分、ちょびっとだけ触れたんだと思う。
の付けているであろう、リップクリームが、僕の唇の一部に付いている。
周りには、マネをしただけとしか思わなかっただろう。顔が赤くなる僕と、手を繋いだまま照れ笑いする君。
ファンとして好きだったが、恋のお相手に一瞬で変化した。
その後すぐにCM休憩があり、僕は急いで台本を破り、自分のケータイのアドレスと番号をなるべく丁寧に書いて渡した。
スタッフの人も、出演者の人も、「またか」と言う風に笑う。
だけど、と僕には分かっていた。
秘密の恋への入り口 だと。