Not cry, My Angel....17
三流・・・四流でも良い様な雑誌に盗撮された。
大丈夫! って顔してるくせに引きつってる。
何時もより僕に引っ付いてきて、怒られた子供のような雰囲気を醸し出しているし・・・・
「大丈夫?」
「大丈夫って思わないとやってけないよ」
溜息を付きながら、ゆっくりと瞬きをする。
は泣かない。
こんな経験が出来るのも芸能人の特権よ!と、メールでも言ってた。
どうして僕になんの相談も嘆きも言ってくれないんだろう。
僕が心配すると思ってるのかな。 でも、男は頼られたい存在なのに。
僕と君にはまだ距離はあるのかな
僕は思いっきり近付いてるつもりなのに
「、ちょっと来て」
「えぇ。2人一気はどうかと思うから、5分後ぐらいに行くわ。ダンの楽屋でもいいかな?」
「構わないよ」
僕は目の前にほったらかしにしていた携帯電話をぶっきらぼうにポケットに突っ込んだ。
そして、あたかもトイレに行くようにの隣から離れた。
悪い虫が付かないように気をつけてよ
声では言えないから、心で叫んだ。
多分、は気付いてくれているだろう。
・
「ごめんなさい、ちょっと遅れちゃったわ。トムがお母さんとイトコに私のサインを頼まれたらしくて・・・」
「そんな事だろうと思ってた」
トムが珍しくソワソワしてたからね。
スタジオの売店で買ってるの見たし。
はぁ・・・ 芸能人が芸能人にサインを貰うなんて、珍しすぎだろ。
「ダン・・・。 私が不安がってたからって仕事を抜け出しちゃ・・」
「仕事よりもが大切だよ」
別に変な事をするわけじゃないけど、楽屋の扉を閉めた。
これなら皆が楽屋に入ってこれないしね。 邪魔者ナシなんて久しぶりかも・・。
「別に無理しなくても良いってば。僕はを心配してるんだ。は気にしないようにしてるけど、精神面が弱くなっちゃう。だとしたら、が何時か壊れちゃうんじゃないかって余計に心配になっちゃうよ」
言おうとした事を言うと、は頷きながらも椅子に座った。
「・・・盗撮なんて慣れてるわ。普通に事務所が出してる写真だって、私が学校に通ってた頃のだったり、寝てる姿だったり・・ダンだってパパラッチに撮られたりするでしょ?でも、そんなに嫌がってるのなんて無いじゃない」
「嫌がる時だってあるよ。友達まで撮られちゃうし」
「私にオフ時の友達なんていないもの。仕事のせいで友達が出来たのはこのキャストになってからよ?」
「エマ達が友達じゃないって事?」
「友達だと思ってるわ。でもオフに一回も会ったことは無い。本当の友達と言えるかなんて分からないわ」
「は、どうしてそう強がるの?」
一番聞きたかったことなのかもしれない。
「強がってなんか・・・」
「頭の中で"しょうがない" って思い込みすぎだよ。自分でもわかっているんだろう?」
ダンの言葉で、少し考えた。
一ヶ月前、ボディーガードが付いたまま街中を10分ほど歩いた。
イメージを守るため行く場所まで決められて、やっぱり行くな とすぐに家に帰らされた。
いつも、しょうがない。 で済ましていた気がする。
― 芸能人は皆そうなんだよ ―
社長に言われた。
でも、そんな事無いじゃない。
ダンは友達と色んな街や店に入っているじゃない。 ダンだって私と同じぐらい知名度はある。
なのにどうして私はこんなにも制限されなきゃいけないの?
「ねぇ、ダン・・・私に自由ってあるのかしら」
「今のには無いんじゃない・・?」
マネージャーと事務所の部長が話していた。
『には稼いで貰わないと。"商品"は売れる時に売らないとな』って。
「どうして・・・ダンはどうして分かったの?」
「を見てるから。 僕のほうが思いは強いけどエマだって思ってるはずだよ。『は無理してる』って言ったことあるし」
自分の事を分かってくれて、嬉しいと思った。
でも、何故か涙が流れてくれない。
溜まっているのに。 目にたくさん溜まっているのに。
瞬きをしても流れ落ちてはくれない。
泣いちゃ・・ダ―…
「泣いちゃダメ って思っちゃダメだよ。泣いたって誰も咎めたりしないから」
わかってるけど、泣けないよ。
ダンには本当に悪いけど、泣いたら解決しないもん。
涙なんて、都合の良いモノって事でもあるんだから。