Not cry, My Angel....14
「・・・撮影始めるわよ!!」
「皆早く位置に行って!」
いきなり大きな声で助監督達が叫ぶせいで、耳がもげそうだった。
「いきなり!?」
「リハ無しかよ!」
不満タラタラで皆が歩く。
その速度は普段の速さ÷10 ぐらいで、亀なみだ。
「の仕事が押してるんだ! 協力しない気か!」
そうカメラマンがいうとチーターのようにスピード感たっぷりで移動する皆。
・・・いや、って名前を聞いただけでちゃんとする役者ってダメだろ。
いつの間にかもスタンばっていて、その驚きが心臓を素早く動かす。
「よー・・い・・・・スタート!」
カッチンの音が聞こえてすぐ演技が始まった。
昨日はアンブリッジの授業シーンだったのに、今日は、
チョウがハーマイオニーに嫉妬して僕に怒鳴るシーン。
映画って言うのは順々にシーンを撮らないから、役をしている自分さえどんな映画に仕上がるのか分からない。
まぁ、と絡めるシーンだったら何でも良いんだけどね。
『コーヒー2つお願いします』
が台本通りに注文する。
初めて2人で外食したことを思い出して、急にドキドキしてきた。
CGでコーヒーが浮いて運ばれてくる・・っていうのは知ってるけど、遠くを移している間に、
スタッフが机に急いでコーヒーを置く。
キラキラに飾られたコーヒーカップは飲みにくくてしょうがない。
近くの席に座っている脇役の子達が、ベタなキスを始める。
それを横目に照れるんだけど、本気で照れてしまう。
も目を反らしながら、演技を続けようとしている。
『あ・・あのさ、お昼に僕と一緒に三本の箒に行かない? そこでハーマイオニーと待ち合わせしてるんだ』
コーヒーを飲みながら僕を見る"チョウ"の眉毛がピクリと動く。
『ハーマイオニー・グレンジャーと?待ち合わせ? しかも今日?』
『うん、そう頼まれたからそうしようかな・・って思って。一緒に来る? 来ても構わないって』
"チョウ"がコーヒーをバンッと机に置く。
『・・・そう・・それはご親切に!』
いかにもイライラしてます! っていう風に演技をする。
さすが主演女優賞総ナメ!
『・・・去年、セドリックと此処に来たの。・・でね、ずっと前から聞きたい事があったんだけど、・・あの人、死ぬ前に私の事をちょっとでも口に出したかしら?』
『・・・それは・・してない。そんな暇が無かったんだ。』
は少し前かがみになって、肩を揺らす。
『セドリックなら・・私の事を心配してくれると思ったのに!』
『・・・そんな暇が無かったんだ』
『・・・貴方は私に教えてくれると思ってたわ!付き合ってる事を知ってるんですもの!・・・なのに教えてくれなかった!』
『でも・・僕はもう話したんだ!話せること全部! ハーマイオニーやロンやダンブルドアに!』
『ハーマイオニーには話すのね!』
目薬でもなんでもない。
本物の涙を流しながら、少し声が変わりながらも言う。
『それなのに、私には話してくれないの!? も・・もう支払いを済ませましょ!私、もう帰るから! マクゴナガル先生に言って帰らせてもらうわ!貴方はハーマイオニーの所に行っちゃえば良いのよ!!』
"チョウ"はポケットからハンカチを取り出して、涙を拭く。
『私をデートに誘っておいて、その後に他の子とデートなんて・・・信じられない!』
『そんなんじゃないんだ!』
『私と彼女以外には誰がいるの?』
『だから、違うってば!』
僕から逃げようとする"チョウ"の手を掴む。でも振り払われて、余計に逃げようとする。
演技だってことを忘れてしまい、が逃げていくように見えて、
の首元に腕を巻きつけて抱きしめようとする。なのには僕の腕からスルッと逃げ出して、三本の箒から出て行った。
逃げられた・・・とショックを受けていると、耳元で蚊の音が聞こえてきて、
払い除けるように、小さい蚊に向かってビンタしてやった。
当たったかどうかは知らないけど。
「カーーーーット!!」
証明が一気に落ちる。
そして、スタッフが一気にわき出てくる。
「ダン、今の演技は良い!」
「最後の払い除ける所も、慰めようとするキューピットを叩いた とCGすれば最高だ!」
「そこまで考えるとは、ダンも脳みそがマシになったな!」
余計なお世話だよ、まったく・・・
でも、ガラス越しに目を腫らしながらピースサインをしてくるを見てみると、
心が一気に和んできた。