涙の理由
私の命はあと数日。
医者にはあと半年あるっていっているけど、自分の体だからそれぐらい分かるよ。
なにをしてでも、疲れがたまって、息切れが酷くて、汗が酷くて、もうムダ。
なにも出来ない。
ホグワーツの中では車椅子にのって、移動している。 階段は杖で呪文をかけて浮かしている。
っていっても、私の力では無理なので、ロンにお願いして持ち上げてもらう。
「ありがとう・・・」
「いいさ、僕が一番得意な呪文だから! ほら、最近は呪文名が長すぎて覚えられなくてサ」
いつも笑顔のロンを見ると、私は胸が苦しくなる。
仲の良いハリーやハーマイオニーと一緒に行動せず、未来がない私と一緒に居てくれる。
もう、ロンに迷惑はかけられないよ・・・・
「ねぇ、ロン・・・・・ もう手伝わなくていいよ」
「え?」
「私・・・もう元気になっていってるから、人の力を借りないようにしてるの。ロンには色々お世話になったし・・・ ロン離れしないとネ」
私は自分の心に嘘を付いた。
本当はもっと一緒に居たい。 私の思いは通じないだろうけど、好きでしょうがなくて、ずっと一緒にいたい。
だけど、もう自分には未来がないんだもの。
その時、ロンが私の視線にあわせるようにしゃがんできて、チュッとキスをしてきた。
驚きで、目が見開いてしまってる。
「気持ちに嘘をついちゃダメさ」
「・・・ッ!」
その言葉に、何故か涙が溢れて思いっきり零れた。
バレたコトが悔しいんじゃなくて、ロンがそうおもってくれてるコトに嬉しくなった。
「でも気持ちに嘘をつかなきゃ・・・・私・・・ッ!」
「僕はをすべて理解して、すべてを愛したいんだ」
「理解してくれなくったっていいよ!」
私は思いっきり頭を振った。
少し頭がクラクラして、目の焦点が合わなかった。椅子の横を手で力いっぱい握り、いったん目を瞑り、もう一回あける。
「理解し合わないと、人間は生きられないんだよ?」
「私はもう数日しか生きられないのよ!!」
「少なくても、生きてる限り必ず・・・・2人の思い出は増えていくよ。」
思いっきり息を呑んでしまった。
ロンに言われると思っていなかったし、なにより嬉しかった。
「は、なにもかも諦めすぎなんだよ。諦めたらすべてが終わりになっちゃうよ? たった一度の幸せのために、は何回も泣いて来たんだね。大丈夫だよ・・・泣かなくて良い・・・・・ 今日できることは今日やろう? 今日出来なかったら、明日頑張る。だから、諦めるなんて言わないで」
ロンは真っ直ぐ私を見て、瞬きをする以外、目を離さないようにしている。
それはが嬉しくて、私は涙が流れた。
ロンは何も言わずに私の手を握ってくれて、私はただ、涙を流すしかなかった。
はあの日から6日後に体調が急変し、寝たままの状況になっていた。
話もしないし、笑顔も出さない。
ただ眠っている。 起きる事もなくて、ただ、死をまつ状況。
もう、君の手が冷たいんだ・・・ 血の気もまったくない。
「さよならほど辛い別れは無いよ・・・・・」
俺が手を握って、そういってもなにも返さない。
だけど、その眠り顔が少し笑っているようにも見えた。
数日間は踏ん張ったみたいだが、もう意識が戻ることはなかった。涙が永遠と流れて、が埋葬される時、俺は前が見えなくなって、その場に倒れた。
夢の中でのは元気に走っていて、綺麗な花畑の中で笑っていた。でも、途中では僕の前から連れ去られていく。
固く手を握っていたのに、距離が遠くなればなるほど手が離れ、しまいには人差し指が触れて・・・ 離れ離れ。
目の前のは、涙を流して、何回も僕の名前を呼ぶ。
走って近付くのに、追いつけない。追いつかない。を失って、本当に苦しい。
明日の楽しみはに会うこと だったのに・・・・
僕は如何したら、明日を楽しめるようになるのだろうか・・。