ジンクスなんて信じなかった。
そんなのに頼らなくたって、私とドラコは大丈夫だと思ってた。
安心できるって信じてた。
ジンクス
「もう少しで卒業だよねー・・」
「俺は卒業じゃないし」
「年上でごめんなさいねぇ」
嫌みったらしく言ってやった。
なのにドラコはフッと笑って、私の手を握る。
「あと1年もがいないとなると、寂しくなるよなぁ?」
「疑問系で言わずに、スパッと言おうよ・・」
「卒業したら如何する気?」
「お父様の仕事を手伝うのも良いけど、それを一生続けるって思ったらまだかなーって思うから、どっかのお店でアルバイトしてみようかなーって思ってるんだけど」
「仕事ぐらい決めて卒業しろよな」
「しょうがないでしょ。お父様を説得するのが大変だったんだから。お父様ったら『お前には楽で給料が良い所につかせる』ってしつこいんだもの。一般人離れしすぎなのよ。何処かの貴族かっつうの」
「お前も俺も十分貴族だと思うんだが・・」
「・・・ソコは突っ込まいの」
は唇に人差し指を当てる。
俺はその手を捕まえて、押し付けるようにキスをする。
毎日していたキスが出来なくなると思えば、寂しさが体中に流れてくる。
「寂しいんでしょ?」
「あぁ」
「珍しく素直ね」
僕より背が小さいのに、僕を包み込むように抱きしめる。
年上に見えないほど、小さな体に、どうして僕は魅了されてしまうんだろう。
「そういえば、皆ジンクスジンクスって五月蝿いけどなにしてるわけ?」
「あーなんか、お互いのネクタイを交換して、卒業式まで持っておくらしいよ。そしたら永遠に結ばれるって」
「はしたいって思う?」
「ううん」
「・・・・どうして?」
「別にジンクスしたって、100%叶うっていう保障はないもの」
まぁ確かに。
間違った事は言ってはいないけど、寂しくなる。
「それに、私達には必要ないって思わない?」
期待以上の発言に、僕の体が熱くなる。
「以外で嬉しかった?」
どこぞの双子みたいに、悪戯成功!って感じに笑って、悔しい感じになる。
「あぁ、嬉しかったよ」
「今日のドラコは素直ね」
「今週でとお別れだからな」
「お別れなんて言わないでよ。別れって言ったら一緒の別れみたいで嫌じゃない」
一瞬で女の顔になる。
寂しそうな顔に、輝きを持った涙が溢れそうなほど涙が溜まっている。
年上なのに、年下のように見える。
「よし、ジンクスするよ!」
「は?」
「ジンクス!絶対に。今から!」
えぇー・・・さっきと言ってる事違うじゃないか。
「だって、ジンクスにでも頼りたくなるじゃん。ドラコってパンジーとかに好かれてるし、一年間も会えなかったら不安じゃん」
自分のネクタイを無理矢理引っ張って、僕の胸元に投げる。
近付いたと思ったら、僕のネクタイを無理矢理ひっぱる。
「交換」
「ちょ・・・」
「してくれないの?」
「そんなムキにならなくても・・・・」
「だって怖いじゃない・・・・ジンクスにでも頼りたいの!」
僕の首を絞めるようにネクタイを締める。
その手は震えていて、溜まっている涙は少しずつ流れ落ちる。
僕はその手をぎゅっと捕まえて、自分の胸元にスッポリとをいれる。
「俺はの事諦めない。父上に反対されてもな」
泣きながら僕に抱きつく。 初めて、声を出しながら泣いた。
僕・・・一年もがいない生活って大丈夫なのかな・・。
不安だけが募っていった。
卒業式よりも辛い一日だった。