君を守りたいと思ったのは、2歳の時だった。
誕生日ケーキなんて、あの家族からは買ってもらえず、
僕がそこにあるだけのパンにトッピングを付けてケーキだと言い張ってあげたプレゼント。
君は、泣いて喜んでくれた。
口をへの字にして、涙はボタボタ零して、せっかくあげたプレゼントを潰すような握り方をして。
僕がいなきゃだめなんだ。
そう思った。
そう思わせた。
辛かった時には 小さなベットとも呼べない場所で抱きしめながら寝たり、涙を拭いてあげた。
お風呂では、シャンプーの泡が目に入って痛いといえば、僕が洗ってあげた。
異様に耳が長くて脚がとてつもなく短いウサギのエレーナ無くした時は、必死に探してあげた。
この思いが、恋愛感情に変わったのが何時かはわからない。
気付いたらそうだった。
『愛しい君を守りたい。』 英国紳士っぽくそう気取った。
だが、僕はなにも守れなかった。
愛しいを守ることが出来なかった。
ごめんね、・・・
もう愛してるなんて言わないから
僕を許して?
CHAMBER OF SECRETS....67
「・・・・ん・・」
「マダム・ポンフリー!! ハリーが目を覚ましたわ!!」
目を開けると、そこはとても眩しかった。
真っ暗な部屋じゃなく、明るく、薬の匂いと、太陽が照らしてくる音が聞こえるような音。
「ハリー・・大丈夫?」
「ハーマイオニー? 石から戻ったの・・?」
「えぇ!! マンドレイクを調合してくださって、他の皆も元通り!」
「ロンは・・?」
「ピンピンしてるわよ。ロックハート先生は・・・・まぁ後で分かる事よ」
「は!?」
ガバッと起き上がる。
頭には急激に血が上ってきて、こめかみから血が吹き出そうなほど痛い。
「大丈夫よ・・・ただ、見た感じ出血が多いの。運ばれてきた時ぐらいしか見せてもらってないけど、服は泥だらけっていうのもあったけど、血が乾いたときみたいな色がしていて・・・ほっぺとか脚とかの切り傷も最近が入ってて腫れてたわ」
その言葉じゃ安心できない。
笑ってくれるをみなきゃ・・・・。
「一番大変なのは・・・・ジニーね」
「ジニー・・?」
「大変っていうのは語弊ね。死んだのよ。衰弱と圧迫・・だと思うけど」
やっぱりか と心の中で思った。
僕はあの後、巨大って言葉以上の蛇と戦った。リドルが見せしめに と、その蛇の尾でジニーを抑えた。
体重で何百トンもありそうな蛇の尾。苦しい以上の問題な訳で。
小さなジニーの"耳"が飛び散ったのが見えた。
「そう・・・」
「ハリー、気を落とさないでね」
その慰めが辛かった。
張り切って向かったのに、女の子1人どころか守られていない。
そんな自分に嫌気が差す。
机の上にもし、ペンでもあったら僕は迷わず手とか足を刺していただろう。
「ねぇ、ハーマイオニー・・・あの光は?」
「あぁ・・あそこがのいる所。マダム・ポンフリーや、監督生の人が呪文を使って傷を治してるの。膿を採ったり、痕が残らないように縫ったり、貧血にならないように血を増加させたり」
あの人達のほうが、を守れているようで、涙が出た。
「ハリー?」
「ごめん、ハーマイオニー・・・寝かせてね。まだ傷が痛いんだ」
心の傷が・・ね。
・
実際は、寝れなかった。
のベットは此処からは見えないが、呪文特有の光が無くなり、マダム・ポンフリーの安心の溜息。
それだけで十分だった。
「ハリー?」
僕はすぐさま起き上がった。
「?」
まだ、体中の骨や筋肉が痛い。
でも、まだ動け、僕の体。
「ハリー・・怖い・・・こっちに来て」
寂しいときにでるワガママ。僕は、体を引き摺るようにしての所へ向かった。
パッと見たの様子は、僕以上にケガはしていなかった。
服は汚れなだけで、頬にあの傷、あと少々斬り傷があった程度だった。
でも良く見れば、足首には明らかに魔法で直しただろっていう痕が残っていたので、これ以上に沢山怪我をさせたんだ と後悔が襲った。
「大丈夫?」
「ハリーは?」
「僕は大丈夫さ」
おでこにキスを落とした。 ちゃんとした温もりがある。
「・・・ハリー・・・・・どうして泣いてるの?」
「こそ・・」
僕等は泣いていた。
の涙は枕まで垂れ、僕の涙はの頬に落ちた。
「が生きててよかった・・・」
「ハリー無茶したの? こんなに怪我してる・・」
「生きててよかった・・・」
「それしか言わ・・ないのね・・?」
「すごく不安だったからさ。を・・・・失うんじゃないかって・・不安で・・・・・に怪我までさせちゃった・・・守れなかった」
「守ってるわよ・・」
「ジニーは守れなかった・・・」
僕の眼鏡にさえ、涙が溜まっていく。そしたらは僕の眼鏡をはずした。
「ジニーはしょうがなかったのよ・・・・・ハリーは充分したわ?」
「してない・・・・ッ」
ジニーにも、ウィーズリー家の人にも悪いことをした。
そして、ジニーでよかった。が死ななくてよかった と本当に思った。
失礼な事は分かっている。だから、せめて心の中だけは思わせて欲しかった。
「・・・大好きだよ」
その言葉は言っちゃ、いけない言葉だと思ってた。
「好きだよ。離れな・・いで・・・僕は未熟で守・・れない・・・・だけどが好・・・・きなんだ・・」
涙ながらに伝えた。
こんなブサイクな告白なんて、世界中探してもないだろう。
「ハリー・・泣きすぎ」
こう僕の頬を触るの手は、ぬるま湯ぐらいの微妙な温かさ。
でも、僕の涙を増大させるのには、充分だ。
怪我をしていない頬を掴んで、頭も引き寄せるようにキスをした。
とてもしょっぱくて、濡れたキス。
でも、とっても愛しい。
未経験な僕には、そんなテクニックを持ってるわけでもなく、気持ちよくさせる自身はない。
だけど、君を好きな気持ちは負けないよ。
真っ白いシーツに寝ているを襲ってるような姿の僕。
泣いてる君の姿は、とても綺麗で、美しい。
必要とする事は 凄く簡単なのに、必要とされる事って 凄く難しい。
大好きだよ、僕の気持ちが伝わってる?