″コンコン″
朝早くから、扉を叩く音が聞こえてきた。不規則で小さい音。眠たいながらも目を擦りながら、扉へ向かった。
ゆっくり扉を開けると、男子寮には来てはいけないはずのが来ていた。
「うわっ!!どうしたんだよ、!男子寮には入ったら行けないんだぞ!!」
の顔を見てみると、涙を流していた。可愛い顔には似合わない大粒の涙を。
同室の奴等も、僕とを凝視していた。何が起きたのか知りたそうな顔をして。は僕にギュッと抱きついてきた。震えていて、朝っぱらにもかかわらず、制服を着て。
「、落ち着け。なにが起きたんだ?」
を離して話を聞こうとしたが、はすごい力で僕から離れないようにしていた。僕はマズイと思い、を部屋にいれ、扉を閉じた。他のヤツに見られたら大騒ぎになるしな。
同室の奴等も、納得してくれたようだし。絶対他の人に言わないように言った。
「、なにがあったんだ。朝っぱらから・・・」
「私・・・ドラコから離れたくない・・・ずっと傍にいたい・・・・」
泣きながら言って来る。嬉しい事を言ってくれる。だけど、なんか様子がおかしい。
「ゆっくりで良い。ゆっくりで良いから、話してくれ」
「今日、お父様から手紙が来たの・・・・朝早くに・・。お父様からの手紙は、いっつも唐突で嫌な事ばっかりだったから、今日も嫌な気がしたの・・・開いてみたら・・・・・」
の目から涙が流れて、僕の腕に落ちた。のポケットから、グシャグシャの紙が出ていたので、僕はそれを取った。の涙で字が滲んでいたが、なんとか読めた。
″。久しぶりだな。
ホグワーツでは楽しく過ごしているか?
昨日、古い友人と久しぶりに会ってな。その人にはお前より2歳年上の男の子がいるんだ。
なかなかの好青年でな、わしも偉く気に入った。あの子を、わしの跡継ぎにしたい。お前の婚約者になってほしいんだ。
この事はあっちも了承している。ホグワーツにいる時に結婚するのもなんだから
ホグワーツを辞めて、結婚をしなさい。これは絶対で、命令だ。
逃げ出す事がないように。
父より ″
本当に唐突な話だ。
の父親は魔法界の中でも、3本の指に入る大金持ちの家だ。政略結婚なんて、本当にあるんだと、思ってしまった。
「私、ドラコから離れたくない!!それに、ホグワーツを辞めるなんて、絶対イヤ・・・」
が崩れそうな勢いで、泣きはじめた。
がホグワーツからいなくなるなんて、僕は絶対絶えられない。ましてや、他の男との結婚だなんて・・・・手紙を握り締めると、紙が潰れる音が部屋に響いた。
「おい、手紙の後ろなんか書いてあるぞ」
声の通り、手紙の後ろを見てみると、字が書いてあった。
″今日、その子と私がホグワーツに行く。荷物の整理をしておくように″
荷物の整理をしておくように。と言う事は、今日中に迎えが来ると言う事。僕はぎゅっとを抱きしめた。離したくない。他の男の腕の中にいれる事なんて、絶対許さない。
「ドラコ・・・・どうしよう・・・嫌だよぉ・・・」
僕はを抱きしめながら、ある事を決断する。
「、僕と逃げよう!」
「え・・?」
<「だって、他の奴と結婚したくないだろ?僕もと離れたくない・・。だから、逃げよう!!僕の父上だと構ってくれる!」
「わかった・・・」
「おい、ドラコ。マジでやるのかよ?」
「と離れるくらいならマシだ!!ホグワーツよりもの方が大事だ!、今から荷物をまとめて。荷物は談話室において、すぐ僕の部屋に。わかった?」
「わかった・・・・」
は僕の部屋から出て、女子寮へ向かった。
僕も急いで教科書やら服を詰め込む。30分ぐらいして、が部屋に来た。
「ドラコ、出来たよ・・・」
「僕も出来た。早くしよう!」
僕は荷物を持って、階段を下りた。
「じゃぁな、ドラコ」
「たまには手紙よこせよ!」
ドラコの同室の人が、ドラコにポンポンと肩を叩いた。ドラコはコクッと頷いて、私を見た。
「、もうホグワーツにはいられない。いいか、でも、他の人にを取られるよりかはマシだ。今から、フルーパウダーでダイアゴン横丁に逃げる。いいな?」
「うん!」
僕とは荷物を持って、フルーパウダーを握り、ダイアゴン横丁へ逃げた。
ダイアゴン横丁へ逃げてから、一週間ぐらいたった。ダイアゴン横丁のホテルに泊まっているおかげであまり人も寄ってこない。
日刊予言者新聞は僕達が逃げた事が毎日書かれている。写真などが乗せてあって、を見つけたら400万ガリオンを差し上げる、とも書かれていた。
私達は幸せだった。ダンブルドア先生やハリーやクラップ達には密かに手紙を出している。皆、私達のした事はビックリしたようだが、応援をしてくれているようだ。
幸せな日々が今日も始まると思ったら、そうもいかなかった。が作ってくれた料理を食べていたら、いきなり扉が開いた。
「、こんな所にいたのか・・・」
「お父様!?!?」
突然出てきた父親に頭の中が真っ白になった。
「、なぜ逃げたのだ。こんなにも好青年なのに」
お父様の後ろにはスラッとした男の子が立っていた。
「、早く来い。結婚式が近づいている。」
お父様が私の腕を掴んできたので、私は必死に抵抗した。
「嫌!!私はドラコと一緒にいたいの!!結婚なんかしたくない!!!」
「何を言っている!マルフォイ家など、わしの家に比べたらちんけな家じゃないか。さぁ、早く!!
「嫌!!嫌ぁーーー!!!」
「やめて下さい!!僕とは愛し合ってるです!!」
「生意気な小僧だな」
の父は、の手を離し、ポケットから杖を取り出した。フイッと杖を振るうと、僕の体が締め付けられるように痛くなってきた。
「ヴゥ゙!!あ゙ぁ゙!!」
痛い・・痛い・・痛い・・・・・体が潰れそうなほどに。
「お父様!!やめて!!!」
「お前がコイツと結婚すると言えば、済むことだ」
「わかったわよ!!結婚するから、ドラコを苦しめないで!!!」
の声が聞こえたと思ったら、体の痛みが消えた。がすぐさま、僕に駆け寄ってきた。
「ドラコ、ごめんなさい・・・・痛かったでしょ?本当にごめんなさい・・・・私がドラコの近くにいたら、ドラコが傷ついちゃう・・・さようなら、ドラコ。私が好きなのはドラコだけだから・・・・・」
からの最後のキスはの涙でしょっぱい味がした。は、お父さんに連れて行かれ、僕の前からいなくなった。
二度と僕の腕の中にいてくれないが、ずっと頭の中に残っていた。ただ、呆然と、と過ごした部屋を見ていた。
「・・・・」
それから僕は、父上にホグワーツに戻れと言われたので、戻った。いつも僕の隣にいたはもういなくて、のお気に入りの場所に行っても、はいない。がどれだけ僕の中で大きな存在になっている事がわかった。
たまたま見た日刊予言者新聞に、の事が書いてあった。
″大財閥の娘、が結婚!だが、結婚初夜に逃亡!″
と書かれていた。
逃亡・・・?僕はなぜか″僕に会いにが来てくれた!″と思った。のお気に入りの場所、一番高い塔のてっぺんの2人用のイスがある所。
息を切らしながら、塔のてっぺんまで登っていった。扉を開けて外を見ると、白いウェディングドレスを来たが、口から白い息を出しながら座っていた。
「!!!」
僕の声に気付いたが、ウェディングドレスを持って、こっちに走ってきた。が僕を抱きしめてきた時、僕もを抱きしめ返した。
「逃げてきちゃったv」
の声も匂いも本当に懐かしくて、ギュッと抱きしめ返した。
「やっぱりドラコといないと寂しい!!」
「・・・」
僕はの頬を触って、唇にキスを落とした。涙の味じゃなく、甘くとろけそうな味がした。
「、本当に寂しかった。が他の男と一緒にいるなんて、嫌で嫌でしょうがなかった・・・・」
「私もよ・・・」
「これからは、ずっと一緒にいような」
「うん・・・」
僕達はまたキスをして、絆を確かめ合った。の父親とまたトラブルがあるかもしれないが、絶対離してなるもんか。こんなに寂しい思いは、もうたくさんだ・・・。