CloveR * SkY


貴方に会えたことが


とても、嬉しくて


貴方に会えたことが


とても、悲しくて


どうしたら良い・・・?


例えば確かな答えがあるのなら・・・


私たちはきっと、


とうの昔に滅んでた・・・・














  Answer

















季節は夏。此処はイギリス。私は18歳で、非現実的な夢を見る子供とは違う。
人間の視力、聴力・・・五感には限界があり、それを上回る生き物はこの地球上に数多といる。
だから目で見えて、触れられるものしか信じないって言うのは、滑稽だけど。でも、私はそれだけを信じている。
UFOとか幽霊とか、悪魔や天使、妖怪に鬼、ましてや魔法使い、魔女なんて信じていない。それらが実在しないと断言できた。だけど。






目の前で起きた事は、“事実”といえるだろうか?私が言う“信じる”になるのではないか?



「うわっ!!!やっべっ!!マグルがいたしっ。」



とてもバツが悪そうに顔をゆがめた彼は言う。その隣で同じ髪の色の青年も顔をしかめた。
私はただその青年達をまじまじと見入り、それから辺りをキョロキョロと見回した。


突如として現れた彼等は、“何処から”来たのか。上に広がるのは空ばかり。ましてや周りには何もない。そんなのどかな草原に、彼等は効果音と共に現れた。



「おい!フレッド、ジョージ!なにやってんだーって・・・。」



また何処からともなく現れた青年は私を見つけるなり言葉を濁した。黒い肌のドレッドヘアー。
彼等三人は友達のようで側に来たドレッドの青年と共になにやら顔を見合わせ言葉をつむぐ。


私は頭が痛くなってきていた。この状況を理解できない。
それからしばらく彼等は話していて、私は頭を抱えていた。ぱっと顔を上げると、ちょうど彼等も相談を終えたらしい。


「君さ・・・名前は?」




赤い髪の青年が気まずそうに声をかけてくる。私はちょっと驚いて彼を見入る。それから自分自身に言い聞かせるように顔を横に振った。


「ん・・?なんか都合よく記憶喪失の黒髪女?」



また同じ髪の色の青年がラッキーっと顔を輝かせて笑う。



「んなわけあるかっ。」




私は思わずそう言い返してしまった。今度はあちら様が呆気に取られている様子だった。
そういえば、良く見ればこの赤毛の青年は双子のようだ。気持ち悪い(失礼)くらいそっくりな顔をしている。



「・・・君が、見たことは・・・。」


ドレッドの青年が口を開くと、私は片手を上げて止めた。三人が顔を見合わせる。


「・・・私、海外旅行が初めてで、きっと疲れてるのね。・・・何も見てない。っていうか、楽しい旅行が台無しになるから・・・関わりたくないんだけど。」



私がそう言うと三人が私をまじまじと見入る。私はそれ以上そこに居たくなくて背を向けて歩き始める。
彼等が止める理由を持ち合わせていない事が、何よりの幸福。















私は止まっているホテルにそのまま帰った。
まだ日は高いものの、なんだか外を出歩いている気分にはなれなかったのだ。


「はぁ・・・イギリスって幽霊とか出るって結構有名な所らしーけど・・・あれって・・・。」



独り言を溜息と共にもらす。私は大きく首を横に振った。



「違う違う。私は疲れてて!!何も見てないし、・・・うん!そうだ、そうだ。」



幽霊なんて居るわけもないし、私はそう何度も心の中で繰り返すのだった。

















翌朝。私は気を取り直してイギリスの街に出る。素晴らしい心構えよね、我ながら。18歳にして、一人旅よv
だから何が何でも事件になんて巻き込まれるわけには行かない。
そんなことになったら、二度と海外に出させてくれないでしょ?そうそう。だから、昨日の・・・事は・・・。



「「あれ?君って。」」



目の前に因縁の双子。私は一瞬止まったが、何事もなかったかのように知らないフリを決め込んだ。出来るだけ避けて二人をすり抜ける。
何とかセーフ、彼等も私を見ているだけでそれ以上言葉を繋げようとはしない。ドンっと誰かと肩がぶつかる。



「あれ、君は・・・。」



二度目の台詞に流石の私も冷や汗をかきはじめていた。恐る恐るぶつかった人を見ると・・・。ドレッドヘアーの青年。
私は頭を大きく振り、自分に言い聞かせてからまた歩き出す。やはり彼もまた、引き止める理由はなかったようだ。











「あーーーーーーーーーーーー、うん。大丈夫。」




そこら辺のカフェに私は逃げ込んだ。ちょっと風変わりなのが気になるが、この際あのわけの分からない人たちと関わらないだけ上等な店。
私がカプチーノをすすっていると、カラカラと乾いた鈴の音と共にお客さんが入ってきたようだ。
私は窓の外を眺めながら、他人事の様に聞き流していた。


「・・・・奇遇だな、っていうか俺等の後を追い掛け回してる?」




側で声が聞こえた。チラリとあたりに視線を漂わすも、他に客は居ない。うやら私に話しかけているようで・・・。



「っ!?・・・・・・・。」



顔を上げると私の頭痛の元。
私はそれからそこには空気しかないかのように視線を反らして溜息を一つ。関わらないのが上策と見た!



「おっさん!バタービール二つ!」
「俺はコーヒー頼む。」



早く立ち去る事を祈っている私の思いを知ってか、知らずか・・・なんと彼等三人は空いている席に座り始めた。だけど残念ながら椅子は残り一つ。
なーんて思っていたら、なにやら棒切れを服の中から出して呪文のような言葉を紡いだ赤い青年とドレッド。

ふわりと浮いた椅子が彼等の側に着地するのはほんの一瞬だった。
私は絶句。当たり前だ・・・なんだ、この大道芸人は・・・。そんな私を見た彼等がニヤリと笑う。



「ほらな!言っただろ?この子はマグルさ。」




ちょっと得意げに赤い髪の、・・・もう片方より活発そうな青年は言う。



「誰もマグルじゃない、とは言ってないだろ、フレッド。」



冷静そうな声でドレッドの青年は言い、そして口はしだけで笑う。



「どっかの美女みたいに、ヴィーラのような子かもって言っただけだ。」




可笑しそうにくっくと笑いながらもう一人の赤い髪の青年は笑う。<私には何が可笑しいのか分からない・・・でもないか。
自分達がしていることに、付いていけていない私が可笑しいのか。
そう思うとなんだか腹が立ってきた。一気にカプチーノを飲み干す。ちょっと焼けどしたけど、それはそれ。私は机の真ん中にあった紙を乱暴に取り席を立った。



「おいおい、待てよ・・・。良く見てみろ、それ・・・お前に払えるのか?」



ニヤリと笑った赤い髪の・・・たしかフレッドと呼ばれた青年が私の方を見る。



「馬鹿にしないで。ここがどれくらい風変わりだからって・・・これくらい払えないわけ・・・。は?」



私はそういいながら不安にかられ紙をチラリと見た。するとそこには1シックル7クヌートと書いてある。
私はわなわなと揺れる手を隠す事もなく、その紙をグシャっと握りつぶした。


「馬鹿にしてんの?」



完全に切れた私は、クラスメートの男子をもビビらす威厳たっぷり(違)の威嚇の目を彼等に向けた。
私が目を離している隙に、彼等は私をからかうために紙を交換したに違いない。彼等三人はビビるどころか一瞬呆けた顔をしてから、ぶっと噴出すように笑い出した。



「これは良い!!驚くどころか切れるかっ!!」


笑い転げ始めたもう一人の赤髪青年がバンバンとテーブルを乱暴に叩く。


「とりあえず座れよ、説明するからさ。」



笑いをこらえるように顔をゆがめたドレッド青年が言った。店員が遠巻きからこっちを見ていることに気付き、私は仕方なく座った。
まったく、どうして大切な旅行にこんな変人に出会ってしまうのだろうか?




















「で・・・何?あんた等が“魔法使い”だって?」


適当に自己紹介をした後、なんだかんだと理由を述べてから結論“俺達は魔法使い”とほざいた。


「馬鹿にしてんの?どこぞの大道芸人めがっ・・・。“魔法使い”?うわぁvファンタジーね。・・・で、・・・・・・あんたら、マジで言わないとぶっ殺すわよ?」



握り拳をギリギリ言わせて私は三人へと視線を浅く向けた。



「・・・・・いや、殺されるのは嫌なんだが・・・・・。」


苦笑したドレッド青年、リー・ジョーダンは言う。


「まぁしかたねぇか!マグルが理解するのは困難だ!頭の固い、面白くないマグルは何も知らずに生活してやがるし。」



どこか上から言うような口ぶりの赤毛青年フレッド・ウィーズリー。



「子供の頃は夢見まくってるくせになぁ・・・。なーんで年を重ねるごとに頭が固くなるんだか。」




浅く笑うもう一人の赤毛青年ジョージ・ウィーズリー。




「・・・・・・・・・。(ぶっ殺してねぇ・・・。)」



チラリと視線を外しギリっと歯が軋む。



「・・・お前の混乱は良く理解できるぜ、。・・・俺も11歳まで一般人だったからな。」



何が理解できる、だっ!!このドレッド!馬鹿にするのもいい加減・・・ってあれ?



「・・・・・・・・・私・・・・・・あんた等に名乗ってないわよね?」




私は恐る恐る言う。確かに奴等の自己紹介は聞いた。
そして私も促されたが、“変人に名乗る名など持ち合わせていない!”っと断ったのに。リー・ジョーダンが浅く笑う。



「「だーかーら!魔法使いだって言ったろ?」」



ニヤリと笑った赤毛はおみとーし!と付け加えた。私は一瞬目の前が真っ白になるのを感じた。



「・・・・・・・・わかった、なら証拠見せなさいよ。」



そう言ったのが、不味かった・・・。


















「・・・・・・・わかった、信じる、からっ・・・おろせーーーーーっ!!!!!!!」



私は大絶叫をかます。奴等に言われるままについていき(危)私は何の変哲もない箒の後ろに乗った。
赤毛のジョージ・ウィーズリーが地を蹴ると同時にふわりと私の身体が重力に反して浮かび上がった。


飛んでいた。ぐんぐん高く上っていく。いつの間にか落ちないようにと彼の腰に腕を回しぎゅっとしがみ付いていた。



「うっわーvv積極的ーっvvv」


フレッドがニヤニヤ笑いながら私の頭をバシっと一発叩く。


「いったっ!?・・・ちょっと、触らないでよっ!!!!!!!落ちたら怪我どころじゃすまないでしょ?!」



私はちょっとヒリヒリする頭に手を当てる余裕すらないまま、叫び返した。


「なんだよ?さっきの威勢は何処にいったんだ?、俺達をぶっ殺すって言ってなかったか?」


ニヤリと笑いながらリーが横へと付いてくる。



「あんたね・・・何十回建てのビルと同じ位の高さに何の安全も保障されずに野放しにされて見なさいよっ!!だいたい、魔法使いとか魔女って良いイメージねぇだろーがっ!!!いつ殺されるか分かったもんじゃないだろっ?!」
「えらく余裕だな・・・。」



背中越しに聞こえるジョージの声、そしてくっくと笑う。


「「「そんなお嬢さんにはサービス!サービス!!」」」
「ふざけた事、ぬかしてんじゃないわよっ!!フレッド、ジョージ!!こんのリーッ!!!!!」
「おv初めて名前呼ばれたぞ?」
「ドッキドキだな、相棒v」
「っていうか、なんで俺だけ“こんの”って憎しみ込めやがった?!」
「「それも愛情だv」」
「ぜってーっ!!殺すっ!!!!!!!!」

















それから数週間、変な縁で一緒になった私たちは。


なんの理由もなく、時間を共有した。


奴等の生きがいだと言う、悪戯を見て。











「・・・・・・・・・なぁんか、変だと思ってたら・・・魔法使いの仕業だったのね(怒)」
「あぁそうだぜ?おもしれぇだろ?なーんもしらねぇマグルたちの反応はv」
「・・・マグル代表としてフレッドを締めておこう・・・、うん、そうしようv」
「・・・・・今誰と会話してた?」





知らないものも見せてもらった。




「うわっ!!すごっ・・・何これ、動いてるじゃんっ!!!」
「マグルの写真はうごかねぇんだろ?・・・つまんねぇよな。」
「・・・・・(怒)馬鹿ね、その瞬間の笑顔をそのまま保存しておきたいって言うマグルなりの美的意識よ!」
「・・・・へぇ、そう?」
「・・・・馬鹿にしたわね?ジョージ。」








知らない食べ物も。









「まっずっ!!!ありえない、何?!この味っ!!!!!」
「あぁ、それか?ハナクソ味だなv」
「・・・・・今なんと?・・・・おいリー、女の子に何食わせたっ?」
「懐かしいって言う奴も居るんだぜ?・・・餓鬼の頃にくったっつってさ。」
「へぇ、そう言う解釈も・・・・・・って私は違うわよっ!!何笑ってんのよっ!!!!!!!」










時間が過ぎるのも忘れて。

不思議な世界に惹かれてった。

だからこんなに現実が、嫌だと思うのでしょうか。

“魔法使い”にとっての“現実”を憧れるのは。

とても馬鹿な事。

彼等にだって“苦悩の日々”は存在するのに。














“魔法使い”である君に惹かれた








いいえ




君に惹かれ・・・ただ君が“魔法使い”だっただけ






「何考えてんの?。」
「別に〜。」




此処は日本。季節は夏の終わり。



秋の気配が漂うから、もの悲しいのか。



君が居なくて、もの悲しいのか。




その答えは、何処にもない。

もう一度、君たちにあえるのならば伝えようか。






「フレッド・ウィーズリー。ジョージ・ウィーズリー。リー・ジョーダン。君たちが大好きだよ。そして、“魔法使い”と“マグル”の違いと運命を、呪います。」











季節が流れ、また熱い太陽が輝く頃。




夜風になびいたカーテンと。




窓を控えめに叩く音。




夏の使者。









その光景を目にするのは、もう少しだけ先の話。